生活保護家庭は、ジェネリックしか使えないって本当?

ジェネリック医薬品の疑問

雇用の不安定さから、全国各地で受給者が増え続けている「生活保護」。事情があって生活が立ち行かない国民に最低限の生活を保障する、大切なセーフティネットですが、近年、受給者に対して「基本的にジェネリック医薬品を処方するよう」国が通達を出すようになりました。

これは受給者の急増によってひっ迫している財政を少しでも軽減するために、というもっともな目的によるものですが、一部では「弱いものいじめになりかねない」「むしろジェネリックに対する偏見につながるのではないか」との意見も寄せられています。

生活保護費の多くを「医療扶助」が占めている!

2013年5月、「生活保護法改正案」が国会に提出され、その中に医薬品に関する内容も盛り込まれました。具体的には「生活保護家庭には原則として、ジェネリック医薬品を使用してもらうこと」というものです。

不況による雇用の悪化や、震災による影響もあり、近年、生活保護の受給者は増え続けています。よって保護費の支給総額も増加し、1年あたり4兆円に届きそうな勢いです。

中でもおよそ1兆5千億と、多くを占めているのが「医療扶助」です。生活保護家庭では、医療費がすべて無料(自由診療を除く)なのはよく知られていますが、もともと体を壊して働けない受給者も多いため、医療扶助がかさむのは仕方ないともいえるでしょう。

このうち、薬剤費が占める割合は約15パーセントとされています。ただでさえジェネリックの利用が国民に呼びかけられている今、生活保護財政を少しでも軽減するためにも、受給者に積極的な利用が求められるのは自然な流れだと考えられます。

さらにあまり知られていないことですが、「生活保護家庭ほどジェネリックの普及率が低い」という事実も横たわっているようです。実際はそれほど大きな開きがあるわけではないのですが、「医療費がかからないから、少しでも安いジェネリックを使おうという意識が芽生えにくいのではないか」という批判的な意見も聞かれます。

そこで国は、生活保護家庭には原則として、ジェネリック医薬品を処方するよう通達することになったのです。

ジェネリックの利用は、決して強制ではない!

とはいえ、受給者に薬を選ぶ権限がまったくなくなった、というわけではありません。そもそも医師が先発薬にこだわる場合は、当然ながら先発薬が処方されますし、薬局にジェネリックの在庫がない時も然りです。 また患者側がどうしても先発薬を使いたい場合は、その理由をアンケート用紙などに記入することで、処方を受けることができます。

つまり完全な強制ではなく、患者側の希望に応じてある程度の融通は利かせている、ということです。しかし非受給者に対しては、先発薬にこだわる理由を特に調査しないことから、一部では「差別ではないか」「医療費がタダなのだから、高い先発薬を使う権利はないと言っているのと同じだ」というような批判もあるようです。

しかし、つとめて冷静に考えてみれば、決してそうではないと思われます。まず国は、生活保護を受けていようがいまいが、すべての国民に対してジェネリックの利用を呼びかけています。 苦しいのは生活保護財政も医療費財政も同じですから、どちらも軽減したいのは一緒なのです。

また世界に目を向けると、日本はまだまだ優しいほうであることが分かります。たとえばアメリカでは国民皆保険制度がないだけに、多くの人が当たり前のようにジェネリックを選びます。 民間の医療保険に入っていても、よほど高額なプランでない限り、保険会社が「薬はジェネリックにするように」と規定していることがほとんどです。

さらに医療費が実質、無料となっているイギリスでも、国がジェネリックの利用をほぼ義務づけています。ジェネリックがあるのに、あえて先発薬を処方する場合は、医師がその理由を国に説明しなくてはいけないほどです。

ですから客観的に見て、日本ではまだ「ジェネリックを強制している」とは言えない状況ではないでしょうか?生活保護家庭に対しても「希望には応じる」という姿勢を見せていますので、「弱いものいじめ」と批判するのはいささか乱暴すぎる気がします。

「ジェネリック=低品質」という偏見につながる恐れも

しかし受給者に対するジェネリックの処方が原則化されることで、「ジェネリックに対する偏見」の問題が考えられます。

もともとジェネリックに対して正しい知識を持っている人であれば、ジェネリックが決して「安かろう悪かろう」の薬ではないことを知っています。しかしそうでない人にとっては、「ジェネリック=生活保護の家庭が使わなければいけない、品質の低い薬」というイメージにつながりかねません。

しかも最近、一部の不正受給者にスポットが当たりすぎたせいで、生活保護家庭に偏見を持つ納税者が急増しています。もしも「ジェネリック=生活保護家庭へのペナルティ」のように見なし、「それ以外の人は安心安全な先発薬を使える」というおかしな優越感を持つ人が増えてしまうとしたら危険です。

実際、2013年には京都市が、生活保護家庭だけを対象に「ジェネリックの使用をお願いします」という内容のチラシを配布したことがニュースとなりました。問題視されたのは、ジェネリックはすべての国民が医療費軽減のために活用すべきであるのに、保護家庭にのみチラシが配布されたということ。そしてチラシの中に「あくまで本人の理解が前提」であることを一切記載せず、強制化になったかのように書いてあることでした。

要は「保護家庭であれそうでない家庭であれ、できるかぎりジェネリックを使いましょう」というのが、国が本当に伝えたいメッセージのはずです。そこに余計な偏見や差別が生まれないよう、啓蒙活動の方法にはやや考えるべき余地があるかもしれません。v